多読教材ORTはどう扱う?Part 2

英語多読ブログ(2018年投稿)が、ここ数週間で一気に検索数が上がっています。
たくさんの方が「多読」に関心があることが分かります。
数年前、自分が書いたものを読み返してみました。

あのブログから今に至るまでに感じたいろいろ…
修正を加えるべき点もあると感じたので、part2書きます。

1.ORTの使用目的
2.ORTを「多読教材」として扱わない
3.「読める」の次の課題
4.辞書の活用
 4-a 辞書を使う理由
 4-b 辞書引きのメリット
5.日本語訳
 5-a 日本語訳をする理由
 5-b 辞書なし和訳へ
6.ORT利用のメリット

1.ORTの使用目的

 ・文字が読める
・フレーズを固まりで音読できる
・英語らしいリズムの習得
・辞書引き(自主学習)習慣
・辞書なしでの内容理解
以上のことが、順を追ってできるようになることが、SunnyでORTを使用する目的です。

この目的をみて気づくかた多いと思いますが
「多読」の目的
とは全く異なります。

2.ORTを「多読教材」として扱わない

「多読教材」を「多読教材」として扱わない
とはどういうこと???
と思われますよね。

そのままの意味です。
Sunnyでは、ORTを「多読用に使用していない」ということです。

一般的に「多読」とは
1.辞書はひかない
2.分からないところはとばす
3.合わない本はやめる
です。
  
これに対して
Sunnyでは
1.辞書をひきます(ある程度のレベルから)
2.(レベルによりますが)分からなくても飛ばしません
3.合わなくても粘ってもらいます

というわけで、
真逆
なんです。

つまり、
「多読」の位置づけで使用していないことは明らか。

ORTを導入した当初は、「多読」への想いがありました。
が、目の前にいる子どもたちの様子を見ながらORTの扱い方は変化していき、「多読」とは異なる使用をしています。

3.「読める」の次の課題

多読の良い点
絵を見て話しが分かり
・どんどん読み進めたくなって
・知らない単語も飛ばしながらも自然にインプットして
・語彙、フレーズが自然に増える
ということだと思います。
とても魅力的です。

私もORT導入当初は期待していました。
が、実際のところ‥‥
多読に取り組みさえすればそうなる、というわけではなく、多くを期待すればそれだけ、子どもたちのやる気をそぐことにもなりかねない、ということが分かりました。

stage1,2くらいだと、絵を見て内容は理解できます。
が、かと言って単語を自然にインプットしているかと言えば、そういうことでもない様子。

stage3くらいになると、読むだけなら余裕になります。
しかし内容については‥‥よく分かっていない。読めればいい、という捉え方になる傾向があります。

注)多読を否定しているわけではないです。多読には、きちんとしたステップが必要だと思っています。読めばいい、ではないということです。Sunnyは多読メインの教室ではないので、多読学習だけに力を入れてはいない、ということをご理解いただきたいです。

4.辞書の活用

文字を見て、ある程度読めるようになることは、SunnyのORT活用の目的の初期段階クリアということ。
次の目的のために辞書を使用します。

4a. 辞書を使う理由

・知らない言葉やフレーズを自然に解釈できる
ことを期待していましたが、実際のところは‥‥
子どもたちに、おおまかなストーリーを話してもらうと
・絵を見て話を”作る”
ということが分かりました。

stageが低いうちはイラストからの推測が容易ですが、stageが上がるにつれてそうはいかないものです。
Sunnyでは「多読」扱いではないので、
たくさんの本に触れていつか意味がつながっていく
という長い目ではなく、確実な理解を求めて辞書引きを開始します。

例えば、このページ。pleasedは感覚でpresentと捉えてしまう子けっこういます。イラストとを見て、「chipはコンピュータディスクをもらった。魔法使いからのプレゼント。」と訳していました。giveがだれからだれに?という部分もあいまいになりがちです。

4b.辞書引きのメリット

・単語の意味を確実に理解
→イラストからの推測には限界があります。予測して辞書を引いてみたら全く違うということも多いもの。「そういう意味なんだ~!」と納得する様子多く見られます。辞書を引き始めるのが3,4年生なので文字から得る知識に納得するこ頃という意味でも辞書引きによるインプットは大きいようです。

・句動詞が自然と身に付く
pick upやlook forのような動詞とセットで1つの意味を作る”句動詞”。
辞書引き当初は、pickだけ、lookだけ調べるのですが、慣れてくるとpickを引いてpick upにさっと目が行く。つまり、最初から「たぶんpick upで調べるんだろう」という推測が働きます。無理やり覚える句動詞ではなく、感覚で身に着ける句動詞。中学生、高校生の英語学習や英検でもその感覚が大きく役立ちます。

・現在形、過去形がセットで覚えられる
ORTには過去形がけっこう多く登場します。
過去形の単語を辞書で調べると、「○の過去形」と書かれていて、子どもたちはため息です。せっかくひいたのに、現在形を調べる必要があるという手間‥‥。でも、この「手間」がいいんです。なぜなら、子どもたちは何度も辞書引きしたくないから、頻出単語は覚えていく、また、過去形に敏感になり、最初から現在形を予測して辞書をひくなどの工夫も見られます。

などなど‥‥その他辞書引きの効果はたくさんありますが、これくらいにとどめます。

左上) blewを引いてblowを知り→左下)blowを引く。 右側)takeの句動詞

5.日本語訳

辞書をひくことに慣れてきたら、早い段階で日本語訳にも取り組んでもらうようにしています。

5-a.日本語訳をする理由

辞書を引くと単語の意味は分かる。
けれど、それを文章にすることができない、つまり、全体的な理解(話の全容がつかめない)につながらないことも多々あります。

英語が読める+書いてある単語が分かる→そのことが必ずしも文章理解につながるわけではない、ということです。

日本語訳を始めると、最初はとてもぎこちない和訳です。
英語と日本語の語順が違うので仕方ないこと。
英語の語順に日本語を書いていく。それを読んでも内容が自分でも分からない、ということもあるようです。

直訳ではなく、自然な訳を書いてもらうように声掛けをしていくと、あるときからとてもスムーズな訳になっていきます。

*余談ですが、日本語の本の読書習慣がある子は特に、その感覚をつかむのが早いです。
英語の前に日本語、ですね。
小さいころから、本を読む習慣は大事にしてほしいと思っています。

とてもシンプルな文。wantもwantedも知っているはず。でも、訳してもらうと「ここがChipの部屋」「ここはBiffに部屋」となりwantは消えてしまいます。「多読」としてはそれでも良いのでしょうが、曖昧をOKにすると子供たちは曖昧なまま進みます。英検や中学の学習が始まったときに困る部分になります。this is ~ではなく、wantを意識して英語のまま理解してもらうためにも、訳す時点でしっかり理解度を確認します。

5-b.辞書なし和訳へ

日本語訳がスムーズになってくると辞書を引く回数が相当減ります。

理由としては
・頻繁に登場する単語やフレーズはインプットされているので、引く必要のある語彙が減っていくということ
・ORTの本の語彙数が相当増えて、辞書を引くことが単純に「面倒」ということ

「面倒」というと聞こえは悪いですが、それで良いのだと思っています。
辞書を引く習慣を期待する時期はもちろんありますが、
推測して考えて、辞書を引かずに読み進めることが最終的に必要だということです。

本来「多読」が求める力を、別ルートから得る
と捉えています。

6.ORT利用のメリット

「多読」としての活用とは異なるSunny独自の使用法ですが、そこから得られる効果は本当に大きいことを実感しています。

・メインに使用しているコースブックをより有効に活用
・語彙数が増える
・英検受験がスムーズ
・長文読解に優位
・文法を自然に理解
などなど、箇条書きで書いてしまえばなんだかありきたりで薄くなって残念ですが…これは、やった人にしか分からないメリットだらけです。
多分子供たち自身、「やってよかった!」なんてことはずっと感じないものかもしれないです。
が、客観的な立場にいる私からすれば、ORTに真剣に取り組んだ子ほど効果が確実に出ていることは明らかです。

継続することの難しさを感じるORT。
そして、継続した結果得られる成果が本当に大きいと実感させられるORT。

私の役割は
Sunnyの生徒さんが、大変さを感じながらも少しづつ読み進めていけるように、個々にあった取り組みを探していくこと、応援することです。

*ORTを多読教材として使用していない
なかなか堂々とここに書くことに勇気は要りましたが
Sunnyの子供たちにとってどう使用することが良いことかを考えた上で、私はこのように利用しています。

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